聴覚の豆知識

  • 振動を自然界では、ヘルツという単位であらわします。
  • 1ヘルツ(Hz)は、一秒間に1振動する音です。
  • 1キロヘルツ(KHz)とは、一秒間に1000振動する音のことを言います。
  • 一秒間に16000ヘルツ(Hz)以上の振動する音を超音波といいます。
  • 人は、16ヘルツ(Hz)から16000ヘルツ(Hz)まで聴く事が出来ます。
  • 16000ヘルツ(Hz)以上の超音波は感じる事が出来ません。
  • 犬の聴覚は、超音波を感じる事が出来ます。
  • 最高38000ヘルツ(Hz)まで感知できます。従って犬では、犬笛という人には聞こえない超音波の出る笛で、犬に命令する事が出来るのです。
  • 例)猟犬の場合、ひと山は聞こえるといわれています。

目的と意義

ご自分で飼育管理している犬や猫及び飼育を開始した仔犬や仔猫が、耳の病気になった場合、これからは、ある程度の知識を持っていなければなりません。又、簡単な処置は各個人が出来るように努力するべきです。
しいては早期に処置することによって、動物の肉体的・精神的苦痛をやわらげてあげられます。処置が遅れで慢性となっては根治させる事が不可能になってしまいます。
そのためには、皆様には、今回の講義を良くお聴きいただき、理解し、管理をしてください。獣医が最新の技術を駆使しても獣医師の自己満足でしかありません。根治が不可能な症例でも、治療する事によって、生命の質・量を大きく改善する事ができます。


耳の機態・その他について

<耳は聴覚・平衝感覚を司る器官>

聴覚

聴覚は天敵から身を守り、捕食する為に野生動物には無くてはならないもの。
外部の音は、空気によって外耳に到達した後、ツチ骨・キニタ骨、アブミ骨の3個の小さな骨が存在する中耳に伝えられる。音波が、鼓膜の外部に当たると鼓膜が振動する。この振動は、一連の耳小骨を経て、中耳を通過する。
音波の力学的なエネルギーを神経電位に変換して、延髄と中脳に伝えられ、聴覚の中枢や聴野がある大脳皮質の側頭葉に到達するといったメカニズムを経て、犬は音を聴取している。

平衡感覚

前庭や三半規管が体の平衡バランスに関与している。
前庭は、聴覚に関与しない為、聴覚障害の犬が同時に平衡バランスの障害を併発することはほとんど無い。
内耳は内リンパと呼ばれ、液で満たされた膜迷路をもった骨迷路からなっている。この膜迷路それぞれは外リンパ液で隔たれている。
膜迷路は、5小室、つまり球形嚢、卵型嚢と三半規管からなる。 これらの各室には、内リンパの動きを感知する受容器がある。
球形嚢と卵型嚢内の受容器は厚いゼラチン様物質に繊毛を突出させた有毛細胞からなっている。 ゼラチン様物質に繊毛を突出させた有毛細胞から成っている。
ゼラチン様物質の中には聴砂、平衡砂、耳石として知られている炭酸カルシウムがあり、頭部が傾くとその砂の重さで有毛細胞の繊毛が曲がる。
前庭神経の感覚終末は、この有毛細胞を取り込んでいる。このようにして、犬は自身の体がどのように移動したか、どのような姿勢をとっているかを知るわけである。
この前庭神経は、眼球の位置や動きを調節する外転神経、滑車神経、動眼神経などに関係する為、前庭神経の異常によって斜視や眼球の振 がみられ、套踉部が斜めに傾く似踉という症状を起こすことがある。


耳の構成(外耳・中耳・内耳)

外耳

  • 耳介と外耳道からなる。
  • 耳介は外耳道の外端で表面が皮膚に被われ、内部は弾性軟骨である。
  • 耳介軟骨で支えられている耳介の形は、耳介軟骨で決まる。
  • 犬において、垂れ下がった耳の屈曲は、対輪のあたりで起る。

中耳

  • 鼓膜・鼓室(中耳紅及び耳管からなる。
  • 鼓膜は、外耳道と鼓室を分ける薄い膜である。
  • 犬の鼓膜は、短径が平均10mm、長径平均15mmで、構長である。内側から引っ張られる(緊張すると)為、外側はくぼんでいる。
  • 鼓室は、空気を含む狭い骨腔である。

内耳

  • 半規管、蝸牛・(側頭骨の岩様部の中にある複雑な骨迷路と脳迷路からなる)リンパ液で満たされる。
  • 音や頭の位置の変化から生じる機械的な刺激を神経刺激に変換し、この刺激は、内耳道を走行する内耳神経(第8脳神経)を通って、側頭部から出る。

犬と猫の耳道は、解剖学的には垂直耳道・水平耳道からなり、形状はL字型である

  • 外耳道は、耳介軟骨の基部が、巻き込んで狭くなったところから始まり、鼓膜で終わる。
  • 犬の外耳道は、始め、腹側方向に走り(垂直耳道)、次いで前内側方向に走る。(水平耳道)
  • 外耳道が曲がっている為に、耳道の奥や鼓膜の耳鏡による検査などを難しくしている。
  • 耳介軟骨と輪状軟骨で作られている。
  • 輪状軟骨は、長さ約2cm、直径5〜10mmの小さな管状の軟骨である。
  • 外耳道は、脂腺と耳道腺を含む薄い皮膚で被われ、細かな毛(耳毛)が生えている。
  • 耳道腺から出される脂肪性の分泌物は、外耳道の皮膚及び繊細な鼓膜を保護する。又、はげ落ちた上皮などと合わさって耳垢を作る。

耳の疾患と日常の異常な行動について

  • 耳をしきりに気にする
  • 頭を振る
  • 床に耳(顔)を擦りつける
  • 足で耳を掻く
  • 膿がでる(重症)

耳の疾患について

6耳血腫

[症状]
  • 耳介が袋状になり中に液体(血液)が貯留する
[治療]
  • 穿刺・切開して排液した後に圧迫包帯をして、再び液が溜まるのを防止する
  • 止血剤、抗生物質グルココルチコイド剤などの投与をする。必ずエリザベスカラーをする
  • 治癒後は耳介が変形萎縮する

耳介辺縁脂漏症

[原因]
  • ミニチュアダックス・ドーベルマン・ミニチュアピンシヤー・ビーグル・スパニェル・ヨークシヤテリアなどにみられる
  • 原因は不明
[症状]
  • 耳介辺縁が皮膚の皮がむけてとれてくる
  • 白い粉をふいたみたいに見える。又、皮膚は硬くなり、脱毛するがかゆみは弱い。
[治療]
  • ラピスグリーン(硫黄)・サルチル酸のシヤンプーが有効
  • 局所に短期間は、ドルバロン塗布も効果がある

耳介の脱毛症

[原因]
  • ダックスフンドにみられる
  • 原因は不明
  • 内分泌障害が関係ある場合もある
[症状]
  • 耳介部全般が脱毛して、色素沈着が診られる
  • かゆみはほとんどない
[診断]
  • 視診にて臨床症状
[治療]
  • 甲状腺製剤・必須脂肪酸を投与する

寒冷凝集素症

[原因]
  • 異常な蛋白により虚血・壊死を生ずる
  • 小犬に起きる
[症状]
  • 耳尖を始め、尾、四肢端、時には鼻端がミイラ様に変性し、壊死脱落が起る
  • 全身状態には、異常は認められない
[診断]
  • 血清或は血奬を摂氏4度、18時間冷蔵状態に置く
  • モヤモヤしたものが認められ、摂氏37度に戻し、それが消失したならば、本症と判断する
[治療]
  • 有効な方法はない
  • 自己免疫性疾患・アレルギー・紫外線・亜鉛欠乏などで二次的に耳介部に病変を発症する

外耳道の疾患原因・症状・治療について

外耳炎

[原因]
  • 黄色ブドウ球菌による細菌感染と、マラセジア・パチデルマチスによる真菌感染が多い
  • 重症例では、緑膿菌などの悪性の菌が感染する
  • アレルギー・ホルモン分泌障害(近年特に内分泌によるものが多い)、自己免疫性疾患をもった垂れ耳の犬は外耳炎を起こしやすい
[症状]
  • 褐色・黄色・黒色など様々な色をした臭いのある耳垢が外耳道に蓄積する
  • 性状は水様或はワックス状で、拭いても数日後、又は次の日には溜まる
  • 外耳道の炎症の影響で耳介の皮膚までもが発赤し、腫れることが有り、犬はしきりに耳を掻く
  • アレルギー体質の犬ではかゆみは全身に診られる
  • 慢性化したものでは外耳道や周辺の皮膚が肥厚し、耳道を閉鎖する
[診断]
  • 耳の分泌物を採取し、染色して鏡検する
  • 細菌感染の検査では、有効な抗生物質を確認する抗生物質の感受性検査が先である
  • 酵母様の真菌であるマラセジア・パチデルマチスでは、鏡検のほか、培養でも診断出来る
  • 全身性の疾患を持っている場合は、必ず検査する
[治療]
  • 菌を確認して、それにあった抗生物質や坑真菌剤を使用する
  • 耳道に軟膏やクリームの薬剤を使う前に、耳毛を抜き、耳を清拭消毒する
  • 耳道内はデリケートな部位なので、清拭には、刺激性の少ない消毒液やオイルを使用する
  • 頻繁に耳の掃除をすることで、かえって病変を悪化させることがあるので慎重に処置する
  • 慢性の炎症で外耳道が閉鎖したものは、外科的に治療する
  • 外耳炎は、慢性化しやすく、また再発しやすい病気なので根気良く治療を続けることである

細菌(BACTERIA)性外耳炎

[原因]
  • 膿皮症の原因菌(スタフイロコツカスインターミディウス)が30%〜50%、検出される
  • 他に、緑膿菌・大腸菌の2種の菌が検出されることもある
[症状]
  • 奬液やワックス状の分泌物が多くなり、臭いを伴う
  • 重度になると耳道にビ爍又は凋∞を生じ、時には肥厚して閉塞する
[診断]
  • 外耳の中にどのような菌がいるかさがす
  • 細菌を培養し、感受性試験をする
[治療]
  • 抗生物質(代表として4種)を使用する

真菌性外耳炎

[原因]
  • 酵母様真菌・(マラセジア・パチデルマチス)による
  • 但し、正常な耳道からも、少数検出されるときもある
  • 他に、カンジダ菌・アスペルギウス菌・ミクロスポーム菌・トリコフイトン菌
[症状]
  • 黒褐色の臭いのある分泌物がある
  • 掻痒の為、耳周辺に引っ掻きキズを認める
[診断]
  • 耳道分泌物を採取し、ギムザ染色で鏡検する
[治療]
  • イミダゾール・ミコチゾール・チオベンダゾール・クロトリマゾールなど、抗真菌剤をもちいる
  • ピロトリマゾール、ポビドンヨード液は、真菌や酵母に有効。しかし過敏症に注意

私゚m癖(ミミダニ感染)

[原因]
  • 外耳道内に体長500μm前後の白っぽいミミダニ(ミミヒゼンダニ)が寄生して起る疾患
  • 犬猫に寄生する。人間に寄生しない
  • ダニは耳道内の表皮面で耳垢や分泌液を採食し生活している
  • 孵化した卵は、幼ダニ、若ダニの時期を経て、約3週間で成ダニとなる
  • 感染は、寄生動物との接触等による
[症状]
  • ダニが寄生すると黒褐色の悪臭のある耳垢が溜まり、犬はかゆみのために、しきりに耳を掻いたり、頭を振ったりする
[診断]
  • 取り出した耳垢を黒色紙の上に静置し、虫眼鏡で観察すると歩き回っているダニを見つけられる
[治療]
  • 耳垢をきれいに取った後、ピレスロイド系などの駆虫剤を使ってダニを駆除する
  • 駆虫剤で成ダニは死滅するが、卵は生きていることがあるので、卵が孵化するのを待って再度駆虫剤を使用する
  • 1週間に2〜3回駆虫するのがよい
  • イベルメクチンの投与も有効である

中耳炎

[原因]
  • しばしば外耳の炎症が波及する
  • 外耳道の炎症を持つものでは、50%が中耳炎になっている
[症状]
  • 中耳炎だけの異常を確認するのは困難であるが、外耳炎の重症例で病変が内耳におよび難聴や前庭炎を発症する
[診断]
  • 耳鏡で鼓膜の損傷がないかを確認する
  • 鼓膜に穴が開いている場合は、中耳の炎症が疑われる
[治療]
  • 外耳炎の治療薬が浸透して効果が出ることもある
  • 鼓膜が損傷している時には、多量な薬液による外耳道の洗浄は避ける

外耳道の異物

[原因]
  • 体を洗った時、シャンプー・水などが大量に耳道に入ると、炎症を起こすことがある
  • 水などの異物が少量であれば、犬が頭を振ったり、布で拭き取ったりすることで除ける
  • 草むらで行動している内に、植物の種や虫が入り込むこともある
[症状]
  • 犬はひっきりなしに頭を振り、違和感がある側に頭を傾ける
  • 患側の耳が赤く腫れることもある
  • 種子や虫は、綿棒などでつつくといっそう、耳の奥に進入する場合があるので用心しなくてはならない
[診断]
  • 犬が、頭を急に激しく振ったり、頭を傾ける時は、異物が入った恐れがある
  • ペンライトや懐中電灯などで、外耳道を観察する
  • しばしば、犬は異常に興奮して痛がり、なかなか観察出来ないこともある
[治療]
  • 興奮した犬の耳道を、治療するのは危険であるので、場合によっては麻酔処置が必要である

耳の守゚?<

[原因]
  • 耳介や外耳道内にイボ状の守゚?ェ出来る
  • 大きさ、数は様々である
  • 耳道内には、沢山の、アポクリン腺という汗腺が存在し、それが守゚?サすることが良くある
  • 中高齢犬に発生し易い
[症状]
  • 初期の小さな時は、無症状であるが、大きさをますにつれて、炎症を起こし、出血する
  • 外耳道内に出来たものでは、耳道を塞ぐ
  • 炎症を起こすと化膿や脂の漏れ出しが診られる
[診断]
  • 良性、悪性を区別する為に、注射針での吸引や切除によって組織検査をする必要もある
[治療]
  • 増大傾向にあるものや悪性の物は、早期に切除する

内耳炎

[原因]
  • 慢性外耳炎・外耳炎の治療後、打撲といったことが原因で発症するが、原因不明の例も少なくない
  • 高齢犬は、発症し易く、稀に守゚?ノよって起きる
[症状]
  • 耳の構造上、最深部にある内耳には、聴覚の働きを持q纓牛神経と体の平衡を保つ働きを持つ前庭神経がある
  • 犬の難聴は、徐々に起り、飼い主が気付かずにいることがあるが、飼い主が声をかけても、大きな音がしても反応が鈍くなる
  • 前庭神経が炎症を起こすと、体の平衡バランスを保つことが出来なくなり、患耳方向に円を描いて歩くようになる
  • 頭部を患耳側に傾け、更に多くの例で、眼球は水平に振騰する
  • 重症になると、犬は歩けなくなり、横転し起立不可能となる。これを前庭障害という
  • 前庭障害は突然起きる為、飼い主を驚かす
  • 前庭s纓牛の両神経の障害が同時にあらわれるのは稀である
[診断]
  • 聴覚については、声を掛け、金属音を発て、それに対する犬の反応を診るが、確認は容易ではない
  • 特に、動物病院などで、犬が緊張している時には、反応はわかりづらいものである
  • 飼い主が、日頃の行動を見て気付くのが、もっとも確実な確認法といえる
  • 前庭障害は、その特徴的な症状から診断出来るが、小脳疾患との鑑別が必要なこともある




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