【協力 世田谷区・ゆう動物病院】

毛や皮膚、目や鼻等は、露出していて、目に触れやすい為、異常があれば、比較的早く気付くことができます。
しかし、歯は口唇の中に隠されている為、何か異常が有ってもなかなか気付かないものです。特に口の奥の方の異常は犬が嫌がって見せない、あるいは、さわらせない場合も有り、普段から口の中をさわらせる習慣をつけるとともに、歯石や歯肉の状態をチェックしておく事が大切です。

 


 

乳歯・永久歯の萠出と残存乳歯の弊害

子犬の乳歯は、生後3週間位から生え始めます。乳歯から永久歯への変換は、3か月齢位から始まり、それぞれに対応する永久歯に次第に生え替わっていきます。永久歯への生え替わりの終了は、遅い犬で生後7か月位が目安です。それ以上の期間、乳歯が残っている場合は、乳歯残存の可能性が高く、注意が必要です。
主として、犬歯に多くみられますが、その他の歯でもしばしば見受けられます。残存した乳歯は、不正咬合や、歯石・歯肉炎の原因となり、下顎の犬歯が上顎にぶつかり瘻孔となったりする場合があるので、抜去することを勧めます。

 


 

歯の種類と機能

歯はそれらの機能により次のように分類されます。

  • 切歯:切断する、かじる。上顎・下顎:各6本
  • 犬歯:捕らえる、引き裂く。上顎・下顎各2本 もっとも大きく力強い
  • 前臼歯:切断する、捕らえる。上顎・下顎:各8本(乳歯では各3本)
  • 後臼歯:すり潰す、砕く。上顎4本、下顎:各6本(乳歯にはなし)
  • 上顎第4前臼歯と下顎第1後臼歯は裂肉歯と呼ばれ、最大の切断歯です。

 


 

歯の組織と発達

歯の構造の大部分は、象牙質からなり、露出している部分はエナメル質で覆われ、歯根部の象牙質はセメント質で覆われています。
エナメル質は固く修復不能ですが、象牙質は多孔質で(細かい穴が開いてること)柔らかく修復可能で、壁状に歯髄を囲んでいます。成熟に連れ、象牙質の壁は厚くなり、歯髄腔は次第に狭くなっていきます。
この過程は1才8か月から3才位までの間に急速に行われ、その後は緩やかとなります。 新しく萠出した永久歯はまだ象牙質壁が薄く、比較的もろい構造である為、折れない様、よく注意しましょう。2才を過ぎるころになれば、永久歯は十分、硬く強くなっています。

万一、歯が折れてしまった場合は、折れ口からバクテリアの感染が起こる場合があるのでそのままにせず、獣医師に相談しましょう。 歯よりも硬いものを噛ませていると、この様に歯が破折したり、歯の表面を覆っているエナメル質が磨り減り、象牙質が露出することによって、より歯がもろくなったり、感染したりするので、やめさせる様にしましょう。

 


 

歯周組織

歯周組織は歯の周囲を保護している組織で、歯周靭帯(ししゅうじんたい)、歯槽骨と歯肉で構成されています。
歯周靭帯は衝撃の吸収等を行い、修復は可能ですが、非常に遅いです。
歯槽骨は顎骨の歯槽窩(しそうか)の構成要素であり、歯根を収容しています。歯槽骨膜の損傷はレントゲンで確認され、歯周組織の損傷の判定に役立ちます。

歯肉は弾力性と保護作用があり歯槽骨に固く付着しています。歯肉は歯周病に対しての防御において大切な役割を担っています。
健康な歯肉がしっかりと歯に付着していることで、歯が抜け落ちるのを防いでいます。従って、歯周組織が歯石等で損傷を受け、歯周病が進行すると、歯はやがてぐらぐらとなり、最終的には抜け落ちてしまいますので注意しましょう。

 


 

ホームケア

犬の歯は、私たちの歯の様に清潔に保つ必要が有ります。
野生状態では、硬い皮や、筋の多い肉等を噛むことによって、歯垢はほとんど取り除く事ができるのですが、ペットフードではそうはいきません。
飼い主が管理しなければ、ペットの歯周病の進行は食い止めることができません。柔らかい歯ブラシを使って歯垢の物理的な除去することはペットの歯周病予防にもっとも有効です。
生後3か月位から毎日ブラッシングを行う事によって歯の表面を清掃するとともに、歯肉のマッサージができます。また、毎日口の中を注意して見る事によって、破折歯、口内炎等、ほかの異常も早期に発見でき、素早く対応する事ができます。

 


 

歯垢と歯石

生え替わったばかりの歯は、白く、ツヤが有り、口臭はほとんど有りません。歯肉は健康なピンク色(犬によっては黒っぽい場合もあります)で硬く引き締まってます。

年齢を経るに従い、手入れをしていない歯は歯垢で黄ばみ、セメントのような歯石が付着し、歯肉は赤く腫れた状態、あるいはぶよぶよと緩んだ状態となり触ると出血したりすることもあります。歯石をそのままにしておくと、口臭もひどくなり、歯周病もすすみます。歯肉は後退し歯根部が露出する場合も有り、そうなると、歯が抜けて落ちるのも時間の問題となります。

歯垢は歯周病の最大の原因であり、唾液中の成分とバクテリアとで成り立っています。歯垢は歯の表面にたまるバクテリアを拠り所に更に溜まってゆきます。
歯垢の付着を放置しておくと、歯垢は石灰化して歯石を作ります。特に、上顎の裂肉歯に歯石が多く付着するのは、耳下腺という唾液を分泌する腺の開口部が裂肉歯と隣接しているからなのです。

歯垢中に存在するバクテリアは歯肉を刺激し歯周病や歯肉炎の原因となります。歯肉炎の初期は歯肉の辺縁に赤い線として観察されます。
この段階では、毎日歯を磨くなどの、適切な処置で十分健康な状態に戻すことができます。もしこのまま放置しておくと、歯肉の辺縁は浮腫を起こしバクテリアの侵入によって、歯と歯肉の間に歯垢が付着し、歯肉ポケットが形成されます。(歯肉ポケット:歯と歯肉の間が剥がれてポケット状になること)

歯肉の炎症は進行し、触れると出血する様になります。この段階でも徹底的な歯石除去と、毎日のホームケアにより元に戻ることができます。しかしホームケアなしでは、およそ2か月以内で、また元の状態まで容易に悪化してしまいます。

治療を怠ると、可逆性の(完全にもとの健康な状態に戻れる事)歯肉炎は不可逆性(もう健康状態には戻れない事)の歯周病へと進行していきます。

歯石を形成するバクテリアは、歯周組織を破壊しながら歯根部に進行し、垂直方向に歯槽骨を破壊し続け、しばしば膿汁を漏出します。歯周組織の50%以上が破壊されると歯は動揺し始め、歯の動揺は更に歯周靭帯をもろくします。歯周組織の破壊が続くと遂にその歯は抜け落ちてしまいます。バクテリアと沈着物の多くは歯の脱落とともに失われてしまう為、歯槽窩(歯の抜けた穴)は急速に治癒し、3〜6か月後には、骨がその歯槽窩を満たし、歯肉の炎症は治まります。したがって、進行した歯周病は歯が抜けない限り、治癒しないという事になるのです。

歯周病の初期段階では、ほとんど臨床症状は現れないのですが、進行するに従い、口臭、嚥下困難(飲み込みづらい)、過度の唾液、口腔内の不快感、出血などの症状が見られるようになります。臨床症状はやがて、単に口腔内だけでなく、全身症状に発展する事もあります。

目の下(頬の部分)が急に腫れてくる場合があります。それは、裂肉歯の歯根部に感染したバクテリアが膿瘍を形成し、丁度真上の部分の皮下から膿汁が吹き上げてきたからです。腫れてくるだけの場合も有りますし、穴が開いて、そこから膿汁がにじみ出してくることも有ります。(犬歯の歯根部に膿瘍ができた場合は、鼻腔の中に出ます。)根治するには抜歯をし、膿の溜まった部分を開放洗浄する事が必要なのですが、年齢的なものや身体の状況等で抜歯が困難な場合もあります。抗生物質で姑息的に感染を押さえる事もできますが、完治させる事が難しい為、多くの場合は再発を繰り返します。

歯石がバクテリアの巣窟で有ることは既に説明しました。歯石中のバクテリアが歯髄に感染し、血行に乗って全身に広がると、他の器官に病巣が形成される事も有ります。心臓、腎臓、肝臓への感染は通常この経路を取り、これは生命にもかかわる重病となります。

この様に、歯や歯周組織の健康状態は、単に口の中だけでなく、全身の問題として捉えなければいけない事がもうお分かりになった事と思います。今すぐ、あなたのペットのお口の中をみてください。もしも、口臭がしたり、歯垢や歯石がついていたら要注意!高齢だったり、持病があったりしても、麻酔をかけずに歯石取りをしてくれる動物病院もあります。怖がらずに是非相談してみてください。それから、歯のホームケアを常日頃から心がければ、もう明日から、我が家のペットは健康優良児に一歩接近!




中央ケネル事業協同組合連合会

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